昇苑くみひもの強み

現在、私たち昇苑くみひもでは自社商品の制作から、さまざまな業種のお客様との取組みまで、組紐作りを通してさまざまな活動を行っております。そんな弊社のものづくりを支える強みについては、大きく3つのキーワードがあります。

「紐を組む技」

組紐には歴史のさまざまな環境で培われた機能性と装飾性が両立しております。この組紐作りは大きく分類すると、昔から使われている道具を用いて、1本1本の紐を組む「手組」の組紐と、製紐機(せいちゅうき)と呼ばれる機械を使って紐を組み上げる「機械組」の2種になります。昇苑くみひもではこの両方の生産体制を現在でも大切に続けてきたことによって、さまざまなお客様のご要望に沿った組紐をご提案することが可能となっております。

伝統を継承する手組の組紐作り

弊社では組紐作りを始めた創業当時、紐を組むための機械はまだ会社には存在しておらず、紐を組むための「道具」を使って職人達が1本1本手作業で紐を組み上げておりました。これが現在でいう「手組」の組紐作りです。創業当時から受け継がれている1本1本の紐を手作業で組む技術ですが、着物の帯締めの用途の縮小に伴い生産数は大きく減少しておりました。ただ弊社では50年以上前から組紐の教室を運営しており、この中で技術の継承を続けてきました。この取り組みのおかげで、現在でも帯締めやその他の特殊なご依頼など、手組ならではの技術によってお応えしていくことが可能となっております。また現在でもくみひもの研究会などに積極的に参加し、新しい知識や技術を学び続けております。

角台
丸台
高台
綾竹台

工芸品として評価される「製紐機」を用いた組紐作り

弊社では1958年ごろから組紐作りに機械を取り入れてきました。これにより組紐の量産を実現するとともに、手組で培った経験を元に高品質な紐を目指し技術を磨いてきました。現在では60台ほどの「製紐機(せいちゅうき)」を所有しており、この機械の多くは数十年前から使われているものになります。弊社の組紐が「工業製品」ではなく「工芸品」として評価していただいているのは、機械場で紐作りに携わる職人も手組の技術や知識を大切にしているからにほかなりません。過去の職人達の知恵が凝縮された機械を使用し、現在も新しい取り組みに向き合う職人達の技術力が我々の強みです。もう一方で、お念珠の房に代表される「撚り房」を作るための機械も導入しております。これらはお寺や神社の飾りなどには欠かせない房の技術でしたが、弊社ではインテリアやアパレル、アクセサリーといった幅広いジャンルのものづくりの素材として、新しい用途でのご要望にお応えしております。

「職人の手」

日本では古来より「結び」の技術が発展してきました。これらは実用と装飾の要素を兼ね備えながらさまざまな用途で用いられてきたのですが、現代のライフスタイルの中ではなかなか見ることができません。そんな結びの技術をベースに弊社ではさまざまな商品を生み出してきました。これらはすべて作り手の手作業によって生み出されます。弊社には10名前後の加工を担ったスタッフが在籍しており、このメンバーを中心にものづくりを進めております。年間で数千、数万といった商品作りを行っておりますが社内のメンバーだけでは実現不可能です。そこで創業当時から私たちの会社に技術を習いに来てくださって、ご自宅でのものづくり(内職のスタイル)で弊社を支えてくださっている方が、宇治の町だけで60名ほどいらっしゃいます(2020年現在)。言い換えると〈宇治の町全体で手作りの商品を実現している〉ということになります。これは創業当時から続く私たちのスタイルです。この生産体制により、小ロットで高品質なものづくりを実現しています。

「守破離」

弊社では創業当時から和装小物を中心にものづくりを続けてきました。数十年前から始まった着物離れの流れを受けて、前社長が新しい分野での組紐の可能性を探す方向に舵を切りました。その一つが自社製品の開発と昇苑くみひもの名前での商品展開です。まだ問屋さん主導の下請けの要素が強かった時代に、自分たちから製品を作ってお客様に届けるということに取り組み始めました。商品の営業や各種イベントへの参加など、さまざまな方面で発信してきた結果、いろいろなジャンルの方々と出会うことができました。その皆様からのご要望やご相談を一つ一つ形にしていくことで、新しい発見があり、新しいものづくりのアイデアへとつながっていきました。この循環を続けてきた結果、現在では和装は元より、神社仏閣、アクセサリーやジュエリー、インテリアや建築といった幅広いジャンルの皆様に組紐をお届けすることができるようになりました。最近では医療やテクノロジーなどの最先端の分野での取組みも出てきております。

これらを形にしていけるのは弊社が大切にしている

「新しいご依頼をできませんと断るのではなく、何か方法があるか一度考えてみる」

ということをこつこつ実践し続けてきたからこそです。

この考えを実現していくためには過去を学び、そこから得られた技術やストーリーをしっかりと身に着けることを前提に、新しいアイデアを考えます。そして自分たちの世界だけでなく、他の目線からのヒントを探します。まさに「守破離」の精神だと思います。これは営業やものづくりの現場といった垣根を越えて、弊社に関わる一人一人が新しいことに前向きにチャレンジするという社風がしっかり根付いてきたことに支えられています。そして今日もまた組紐の新しい可能性を探して社員みんなで奮闘しております。